鎌先温泉 時音の宿 湯主一條 一條スイート

 東北自動車道をひた走り、宮城県の最南端にあるのが白石市です。
 遠くに蔵王連邦を眺め、白石城や白石温麺(素麺の一種)が有名です。その白石の中心部より山里に向かって10数分は知った所に鎌先温泉があります。目的地の湯主一條は最奥地にあり、とにかく奥へ奥へと細い小道をそのまま車で向かうと、エントランスが見えました。しかし身動きできないほどの道なので、下にある広々とした駐車場に駐め、電話で迎えに来てもらった方が良さそうです。
 さて鎌先温泉は室町時代に落武者により開湯し、以来600年間湯守りをしてきたのが一條家だということです。子々孫々受け継がれ、現在の当主は二十代に至っています。
 2008年7月に別館をフルリノベーションし、リニューアルオープンしたというので、予約をしました。設計はあの名だたる旅館を担当している石井建築事務所ということなので、期待は大きく膨らみました。
 客室は「セミスイート」「湯主スイート「一條スイート」等、8タイプほどあります。
 今回は一番広くて100平方メートルあるという「一條スイート」に宿泊しました。
 ロビーで抹茶とずんだもちをいただきながらチェックイン。その後改築されて迷いそうな階段を上ったり下ったり、また上ったりを数回繰り返すことで木造別館3Fに到着。エレベーターはありませんが、増築を繰り返したこの建物の形状では、設置しても一部の使用に限られるし、使い勝手は向上しないと思います。

 一條スイートは左記のようにホテル仕様のワンフロア構成になっています。クイーンベッドクラスの巨大サイズのソファが置かれたリビング、余裕の幅のシモンズベッド2台が置かれた寝室、 琉球畳のような方形の畳が敷かれた和室が何の仕切りも無く繋がっているので、非常に広々としていて開放的です。
 2ボウルの化粧室と白で統一して清潔な内風呂、 外には伊達みがけ石の源泉掛け流しの露天風呂が配置されていて、内風呂から露天風呂へもスムーズに移動することが出来、客本位に立った客室で造りであることが分かります。ウィークデーに宿泊したこともあってか、他の客の声や気配は殆ど無く、ゆったり過ごすことが出来ました。

一條スイート 別館をフルリノベーション

スイート全体 大きなソファ
和室の佇まい
余裕の広さのベッド 波動スピーカー
加湿器(深澤直人氏デザイン) コーヒー類も充実

  • ホテル仕様の中にも和室を配置するなど、リラックス出来る場を提供しているのが心憎い配慮です。客室の備品も使い勝手とデザインを考慮して選んであり、どれも客室に違和感なく溶け込んでいます。
    特にエムズシステムの波動スピーカーは、なかなかの優れものです。このスピーカーが奏でたジャズで、一條スイート全体が心地よい音楽に包まれます。持参したジャズやクラシックもシャワーのように隅々まで浴びることが出来ます。
  • ソファの広さは格別です。特に奥行きが2メートル近くあるので、そこで足を伸ばしたり、寝そべったり、ビールを置いて一杯やったり、殆ど和室で寝そべるような感覚で使えました。露天で湯浴みした後も足を適当に投げ出せば、そこが一番心地いい場所となります。
  • コーヒーはドリップ式のタイプが置かれ、沸かして飲むようになっています。棚の下に冷蔵庫がありますが、天然水が2本のみ。有料でも構わないので、ビールや冷酒などを備えるべきでしょう。到着してすぐに販売機探しで館内を彷徨うことになりました。ただ館内の自動販売機は比較的安価で飲料水を販売しています。 
二人で余裕の露天風呂
リビングより 大きな窓を切った内風呂
2ボウルの化粧室 アメニティ類

  • 露天風呂は源泉掛け流しです。 常に適温に保たれており、湯は柔らかく、肌にも優しいです。見た目以上に深く、女性の場合は顔の付近まで湯船につかることになります。日中は雨だったので、屋根が無い分、雨に打たれます。半屋根にするなど改善の余地があると思います。
    裏山が覆い被さるような敷地の出っ張り部分に造ったテラスで、景色は臨めず、見ることが出来るのは竹林のみです。夜は逆に屋根が無かったのが幸い?して天空の星空を眺めることが出来ました。
  • 内風呂も大きめです。2人で入ることは無いと思いますが、十分な広さです。窓は遮るものがないので、外風呂のように開放的です。横にバラの花などが置かれ、浮かべて楽しむ趣向になっています。
  • 化粧室も十分な広さを確保してあり、また歯ブラシや櫛などは黒で統一してあります。バスタオル用のタオルウォーマーもあります。
個室料亭となった木造本館
角部屋の匠庵 前菜
雪花豆腐 薬膳スープ
仙台牛ステーキ 宮城野ポーク
タラバ蟹ステーキ&吉次の塩焼き(別注)
朝食

白石温麺
  • 夕食の時間を設定すると、担当の方が客室まで迎えに来ます。これは有り難いことです。「館内も一條の森なので、楽しんで下さい」と言うほど迷いそうなので、食事処の匠庵にはすんなり到着することが出来ました。
  • 時代を感じさせる本館です。木造一部4階建ての本館大正末期から昭和初期に建てられた歴史的建造物で、1本の釘も使用しないで通し柱によって建てられています。元々はこの個室食事処で寝泊まりしていたと言うことで、適度な狭さに当時の湯治の様子を垣間見ることが出来ます。
  • 料理は佐々木料理長自慢の創作会席です。比較的リーズナブルな値段設定からの宿泊にも拘わらず、一品出しにこだわり、温かい物は温かく、美味しい状態で運ばれてくるのは嬉しい限りです。メインも2品から選択できるなど、客本位に立った心遣いがあり、全体的に頑張っている宿と言えます。
    別注のタラバ蟹ステーキは、生焼けの旨い時間を見極め、板長自ら小走りで持参してくれました。
    「美味しい物は、一番旨い状態で出したい」
     心意気がひしひしと伝わってきた逸品です。
  • お造りのカルパッチョ仕立ては、オリーブオイルが今ひとつでしたが、蓋物の雪花豆腐は出汁の効き方がまずまずでした。
    食材も地元の物を中心に宮城の味を堪能することが出来ました。
    ひとつ要望をすれば、この客室に合わせて別注のような料理が1、2品登場すれば満足感は一層広がることでしょう。

  • 朝食も地元白石市で人気の温麺を始め、バラエティ豊かです。匠庵で「美味しかった」とひとときを過ごせます。食後にはコーヒーや5年物のヨーグルトや果物が添えられ、満足度は高かったです。
  • 今回の宿泊は夫婦揃っての忘年会でしたが、ゆったりと1年を顧みることが出来ました。たまたま2人とも体調が芳しくありませんでしたが、担当のスタッフ始め、出会う方皆に笑顔替えが絶えず、気持ちよく過ごせました。
    若女将がやや右往左往している所があるので、スタッフとの役割と明確にしていくと、より落ち着いて愛されていく宿になっていくと思います。
      


  • 宿泊日 年の瀬を静穏に締めくくる
  • 参考価格 37950円    
  • 時音の宿 湯主一條の予約
  • 追記  一條のご主人はこのコメントを参考にされています。こちらで指摘したことが改善され、HPでも付記されていました。

夕食 客室 風呂 サービス 清潔感
旨い出汁 ホテル仕様 屋根が必要 波動スピーカー 古くも清潔
タラバは絶品 ワンフロアで広々 景観は臨めず 食事は個室 客室は文句無し

 近場のお勧めスポット
  • 白石城
    白石城は白石市の中心部にある益岡公園にあった平山城。
    春といえば桜!白石城のある益岡公園には約400本の桜があり、4月中旬頃に見頃を迎えます。
  • 白石温麺
    油を用いないのが特徴の素麺。長さ10センチメートル程度で短い束で、熱くしても冷やしても食べるが、温麺は冬の温かい麺に人気があります。

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