唐津市 唐津の料理宿 松の井 特別室 鯛

  佐賀県唐津市。古く大陸の唐との窓口だった唐津は、生命を育む豊かな海の玄界灘と唐津湾に面し、多くの自然の山々に守られた土地です。観光名所も数多く、朝靄けむる松林が広がりを見せる、光まばゆい虹の松原。要衝の地に建てた唐津城などがあり、唐津くんち期間中は50万人を超える観光客が訪れます。
 しかし今回訪れた理由は別にあります。それは日本
一美味しいと言われる呼子のイカの活造りを味わうことであり、もう一つは器の代名詞である有田焼や伊万里焼とは一線を画して庶民の間でずっと利用されてきた唐津焼を直に手にとって確かめる、ということでした。
 宿泊の宿は随分と悩みました。唐津と言えば全国的に名を馳せている洋々閣。そしてその陰に隠れる松の井。敷地が隣り合わせの宿で、最初は勿論洋々閣で考えました。客室はどちらの宿も広々としており、唐津焼きで食事を提供するなど共通点がある宿ですが、最後は料理の満足度の高さを決め手としました。
 電話の対応は双方に素晴らしいものがありました。少々不躾ながら思った質問をそのままぶつけてみました。
「洋々閣が有名ですが、料理満足度は九州で一番のようですね。料理内容はどういったものなのでしょうか」。
 女将さんから明快な答えが返ってきました。
「確かに洋々閣の方が皆さんご存じです。だからこそうちの宿は料理にとことんこだわり、どこの宿にも負けない自信があります。料理に関しましては、どなたのお客様にも満足して頂ける料理をお出ししております」
  これで決定しました。 

唐津焼三昧の宿

前八寸の一品 関鯖
関鰺 あわび/五島産伊勢エビ/生雲丹など
鰈唐揚げ 烏賊の活造り
佐賀牛しゃぶしゃぶ あらかぶの煮付け
醤油差しの面々 数々のお猪口

  • 確かに女将さんの言うとおり、料理自慢の宿です。
    登場する料理は全て繊細かつ豪快で、品数が豊富です。普通の客室でも十分な12品(前八寸、煮物椀、活造り、向付け、焼き物、強肴、煮物、酢の物、台の物、御飯、水菓子など)が出ますが、この特別室の場合はそれに付け加えて「佐賀牛しゃぶしゃぶ」「あわび」「五島産伊勢えび」「サザエ」「生うに」も出るので、全て食べられるかどうか疑問となります。特に佐賀牛のしゃぶしゃぶは、ほぼこちらが出来上がった頃に登場するので、目の前におかれても、躊躇するばかりです。
    玄界灘を抱えるだけのことはあって、殆どが魚介料理です。ただ同じ烏賊料理でも活造りにしたり、石焼きにしたり、いろいろな愉しみ方があります。
  • 全体的に素材そのものの旨味を味わいますが、味付けはやや醤油に頼りすぎているところが感じられました。また料理によっては捌いてから少々時間が経過した物があったようです。一品一品運ばれてくるものの、そこが残念に思います。
  • 料理は全て唐津焼で登場するので、このことも楽しみのひとつです。人間国宝である十二代中里太郎右衛門の作品を始め一皿一皿に思わず魅入りました。しゃぶしゃぶや伊勢エビを載せた器は、豪放な作り手の逞しさを感じる逸品です。
    食事時に提供された醤油差しやお猪口は、敢えていろいろな種類を出して、お客に喜んでもらおうという女将さんのはからいです。唐津の地酒1本の注文で、お猪口が6つ。それも色も形も大きさも、勿論作者も異なるものが6つ。なかなかに愉快ではありませんか。
    雑器として焼かれて生活に根付いた唐津焼。宿にいながらにして、見るだけに留まらずに使用勝手も確認出来ました。
風情ある玄関 客室「鯛」入り口
広縁より 奥座敷
爽やかな朝の陽光 池を配した前庭
客室備付けの檜風呂 明るい洗面

  • 客室は全部で11部屋となります。今回宿泊した鯛という客室は1階の一番奥にあります。一度本館から出て回廊を通るようにして専用玄関から客室に入ります。そのためここは離れと言った方がいいかも知れません。部屋の構成は15畳と7.5畳の2部屋に庭に面した広縁、エントランスも広々で、唯一この部屋だけに檜風呂が備え付けてあります。トイレ、洗面所、浴室共に全体的にたっぷりと取ってあり、余裕があります。布団はどちらの部屋でもOKで、化粧鏡も別に用意してあります。
    離れタイプのごう天井や欄間は、なかなか見応えがあります。障子を開けると唐津城を臨むことが出来ます。
  • 館内の浴室に案内してもらうと、男女別の暖簾が見あたりません。繁忙期を外した時期だったため、今宵は全館貸し切りになっていました。
    「お二人でごゆっくりどうぞ」という女将さんの言葉は、そういう意味だったと分かりました。お陰で夫婦でゆったり湯を満喫しました。
    館内至る所時代を感じますが、清潔さは忘れていません。旅の疲れを癒してくれた風呂は2年ほど前にリニューアルしたようで、石風呂が心地よく、水垢など全くありません。
  • それにしても敬善坊窯・中里鉄也作の唐津焼の器を風呂の洗面台に利用するなど、本当に唐津焼三昧となりました。
  • 客室からの眺めは庭だけですが、この部屋のためだけにある庭なので、そのまま下駄を履いて外に出ることが出来ます。翌日の朝方はカラカラ鳴らしながら歩くこと僅か2分、砂浜にたどり着きました。彼方に虹の松原を目にしながらの散歩は、夏ながら爽快そのものでした。
ごう天井 あちこちに唐津焼が
囲炉裏を切った個室 朝食

  • 朝食は囲炉裏が切ってある専用の部屋でいただきます。
    昨日とは打って変わって、小魚を入れた大根おろし、和え物、茶碗蒸しなど加えて、日本一という呼び声高い
    川島豆腐店の湯豆腐など胃に優しいヘルシー料理が中心に並びます。しかしなかなかの品数で、しかも烏賊料理も健在なので、結局は胃の悲鳴が聞こえてきそうです。
    奥の方にはさりげなく唐津焼が数十点置かれていました。焼き物の良さですね、手にしっかりなじんでくるから不思議です。その中の数点は、我が家に嫁ぐことになりました。
    この日は伊万里巡りの前に楽しみにしていた「つく田」に行こうと思っていたいのですが、これだけ朝しっかり食べれば、夕刻までも
    ってしまいます。次回までのお預けです。  
  •  
早朝の砂浜 遠くに唐津城 秘窯の里 大川内山


夕食 客室 風呂 サービス 清潔感
豊富な魚介類 大きな窓 檜浴槽 愉しませる趣向 古くも清潔
愉しい唐津焼三昧 広々設計 清潔な石風呂 朝食用に別個室 適度な清掃

 近場のお勧めスポット
  • 唐津焼
    生活の雑器として始まった唐津焼。素朴な色合いは、民家に合いそう。周辺には幾つもの窯があります。
  • 写真をクリック!
    上記の3枚の写真や「川島豆腐店」「つく田」をクリックすると、そちらへジャンプします。

ページトップへ