石川県 山代温泉
べにや無可有 特別室 若紫
エントランス | |
円庭 | |
方林 | |
古事記や日本書紀に登場する伝説の三本足の霊長ヤタガラス。 1300年以上前に高僧の行基が霊峰白山へ修行に向かう途中、 羽の傷を癒している水たまりを見つけたのが始まりで、 それが山代温泉として今に受け継がれている。 永禄8年(1565年)5月、傷を負った明智光秀もまた湯治のため、 10日間にわたってこの山代に滞在したと伝え残されている。 光秀をはじめとした京の都の人々までもが山代の温泉を知り、 全国から人が集まった所以である。 与謝野晶子の心をとらえ、泉鏡花の思いを揺らせ、 北大路呂魯山人の遊び心を刺激せずにはおかなかった場所なのだろう。 自然の山庭を囲むようにして建つ別荘のような宿。 外の風景が流れ込んで来るような開放感あふれる造り。 「無何有」とは何の作為もないただ自然なこと。 荘子の言葉がそう語るように、自然の癒しによって無心を取り戻すことを主眼に置いた宿である。 「無可有」のコンセプトの通り、華美な装飾は極力避けて落ち着いているが、 昭和3年創業の「べにや」のリニューアルなので、 団体客が闊歩していたであろう古の建物やコンクリート片が所々にあり、 目に触れることになった。 |
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日差しを浴びて眩しい緑 | |
この一角のゆるり感が素晴らしい | |
ベッドルームや和室 | |
無機質な廊下を越えたところに 緑が広がる |
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シャワールーム | |
露天風呂は循環形式の温泉 何時でも適温に保たれ、広さは十分 |
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ロビーに入ると中庭が陽光眩しく煌めいている。 ここでウェルカムジュース。絞りたてでフレッシュそのものだった。 特別室の構成は寝室、ダイニングスペース、リビング、10畳の和室とクローゼット風の部屋、 その他にシャワールームや露天風呂スペースと言ったところで、 面積は100平方メートルある。 寝室と和室は障子で間仕切りをしてあるが、 天井部分は開けてあるので、部屋に重苦しさが無い。 リビングとダイニングが直線的に繋がり、大きな窓も相まって開放的である。 使い勝手としては、10畳の和室にはひとつでもいいので開口部が欲しいところだろう。 室内の彩りも無彩色を基本にしており、 装飾類も僅かに留めているので、非常に落ち着いた造りである。 殆どの時間は籐の椅子に腰掛け、ただただ外の緑を愉しむ趣向で時が刻まれていった。 大きく切った窓から客室から見下ろす薬師山が素敵な散歩道になっている。 |
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鮑と海老のやわらか煮 | |
冬瓜釜 | |
平目そぎ造り |
加賀野菜炊合わせ | 白山氷室 凍結酒 |
若鮎を炭火で | |
加賀橋立港の毛蟹 | |
合鴨つみれ鍋 | |
のど黒炙り | 牛乳葛豆腐と加賀梨/桃太郎 |
夏の懐石風の料理は地物を中心。 手取川名流大吟醸の一献から始まり、 お造りの平目や毛蟹は加賀の橋立港から水揚げしたものが供される。 冬瓜を器にしたお吸い物は淡い出汁が程よくきいて食材の旨味を堪能することが出来た。 強肴は鱧のしゃぶしゃぶと合鴨つみれ鍋を選択出来、 その後の鍋は雑炊になるので、まさに〆にぴったりだった。 妻は川魚の鮎が駄目だが、直前の申し出にもかかわらず、 のど黒に変更してもらったために美味しくいただいた。 全体的に上品で細やかな手仕事がされており、別注した活蛍烏賊沖漬の他、 追加料理も10品ほど用意されているので、質量共に満足いく夕食だった。 食前酒の手取川大吟醸を始め、 凍結酒の白山氷室など幾つか地元酒をいただいたが、味わいはもうひとつ。 ワインリストもあったが、和食を考えれば、 近県の日本酒も揃えて置いてあればより一層宴も華やいだことになるだろう。 |
- 参考価格 87600円
- べにや無可有の予約
夕食 | 客室 | 風呂 | サービス | 清潔感 | |
8 | 9 | 7 | 7 | 8 |