四季館 彩冬 安比の食の宿 特別室「かたくり」

 安比スキー場。蔵王スキー場と共に東北を代表するスキー場です。
 週末となると鮮やかなスキー服を身につけ、スキー板を載せた車が走っていましたが、最近では殆ど見かけなくなりました。ジャリジャリ路面を削るスパイクタイヤも懐かしい音の一つとなりました。
 余暇の過ごし方が多様になってきて、わざわざ寒い冬に外に出掛けたり、スキーやスノボをしたりするのが少なくなってきました。若い年代の方も「ほっこりと温泉!」が一番と思うのかも知れません。
  安比高原スキー場は何度と訪れた懐かしい場所です。

朝早く出掛けて夕方までずっと滑りっぱなし。連泊するときも朝食を食べたらすぐ出掛けてスキー場へ。休憩と言えばリフト上というほど、スキーやミニスキーに明け暮れていたような気がします。。
そんなときによく利用したのがペンションや民宿でした。利用料金が割安で適度にほったらかしにしてくれるので、有り難い存在でした。
今回八幡平や安比高原を走ってみると、寂れた国道になっていて、スキー場周辺の民宿やペンションは建物が壊れていたり、あっても休業状態が目立ちました。スキー客の激変に伴い、経営が立ちゆかなくなったようです。

今回はそんな時代から民宿を続けていた四季館彩冬を訪ねました。四季館彩冬は何度もリニューアルしながら、時代のニーズを上手く掴んできた宿の一つと言えるでしょう。2005年に露天風呂付客室を新設した新館と、2007年に全ての客室をリフォームした本館。合計で25ある客室は同じ間取りが一つもありません。

 国道沿いにありながら、館内は思った以上に静けさを保っています。入ってすぐのロビーには囲炉裏があり、土産物コーナーを設置したり、女性だけですが彩り浴衣を選択出来たり、2Fには足湯コーナーも設置ゆっくりコーヒーが頂けるラウンジも設け、客の要望を次々と取り入れ、民宿という概念からは完全に脱した宿に生まれ変わっています。

 民宿から脱却した宿

小粋な土産物コーナー 小ライブラリー(宮沢賢治関係の本)
笹水/コーヒーラウンジ
吹き抜けのラウンジ 2Fの足湯
数種類ある大浴場/露天風呂

客室は一番人気の特別室「かたくり」を選びました。
和風庭園付きのくまざさも魅力的でしたが、「客室露天からの眺めは館内で一番」という触れ込みに惹かれてこの客室にしました。

入り口付近 リビング
小上がりのベッド(コート掛けの棚がないので↓となった)
コンパクトな居室
丁度良い大きさの陶器露天
シャワールーム
1ボウルの化粧室 簡素なアメニティ
空の冷蔵庫 晩秋の様相
  • ここのもうひとつの売りが食です。安比八幡平の食の宿と謳っているとおり、食にこだわりがあります。まずは客室によって異なる懐石膳、特別懐石膳、特別室限定「美食膳」の3通りがあります。
  • もうひとつのこだわりが全7品の特撰食材からメイン4品を選択するコースです。コースには定番の「前沢牛のサーロインステーキ」「前沢ロース牛のしゃぶしゃぶ」「生タラバガニの炭火焼き」「三陸産活鮑のお造り」「八幡平杜仲豚の豆乳しゃぶしゃぶ」「前沢牛のにぎり」があり、季節によって「伊勢エビのお造り」「松茸の炙り焼き」「下関産ふぐちり鍋」などがあります。
  • うずらの卵に食紅を付けて柿の実、栗のいがは蕎麦で表現したりと、前菜はなかなか季節感を出して鮮やかです。お造りも本鮪や牡丹海老の他に雲丹を鱸で巻いた物は取り合わせが綺麗で美味でした。最後の〆の茶漬けは可愛いおむすびがちょこんと入って、作り手の確かさを感じました。
  • 基本のコースだけでもなかなかの量ですが、メイン4品もかなりのボリュームがあります。驚いたのはメイン1品ずつ殆ど2人前が登場することです。最初の伊勢エビのお造りは小ぶりながら2尾。前沢牛のしゃぶしゃぶは丁寧にも鍋まで2つ登場したのには、驚きを越えて呆気にとられました。
  • この基本コースとメイン4品全て完食するのは、かなり食に豊かな人でないと無理でしょう。旅行業者の口コミには「おなかがぱんぱん」「食べきれなかった」という声が多く掲載してあったのは、きっとこの特別室の4品を選択したのだと思います。この客室の場合はメインを3品という選択も出来るので、そういったコースを選んだ方がいいかも知れません。
  • 食材は地元岩手を中心にしていますが、他地域からも取り寄せているようです。八幡平にやってきて魚介類やお造りが豪華という矛盾めいた事を感じないわけではありませんが、ターゲットの若い世代に上手く合わせていると言えます。適度な狭さながら部屋食が出来て、客室露天があり、これで夕食は海山何でもありで、しかも大変ボリュームがある。朝食もバイキング形式でモリモリ食べられる。若い世代に人気ある宿というのが頷けます。
前菜 名残を演出した八点 生湯葉刺し
茸のみぞれ和え 目にも鮮やかなお造り
伊勢エビのお造り(2尾も!) 伊勢エビの頭汁
食感がもうひとつ 前沢牛と大根の年輪煮 前沢牛ロースしゃぶしゃぶ
タラバガニの炭火焼き
鰈の姿焼き(骨は煎餅に) 記憶に薄い大吟醸
出汁でいただく鮭茶漬け やっぱり野菜な?デザート(トマトレモンみつ煮)

  • 朝食は1Fです。様々なお総菜が用意してあり、自分でいろいろ選んでテーブル席か畳でいただきます。 岩手牛乳は勿論、コーヒーやジュース類もおかわり自由です。特別室の場合は、ラウンジでもコーヒーを頂けるようです。
  • お部屋エステも可能ですが、マッサージをお願いすると近隣の整体師の方がいらしてくれました。単なるマッサージとは異なり、足腰の矯正も一緒にお願いできて有り難かったです。
  • この宿の出発点は民宿だったので、特段ソフト面のサービスはありません。その代わりハード面でお客に喜んでもらえるような物を形にしていると思います。温泉が噴出しないという逆境ながら、湯船だけで7つ揃えています。
    2Fの足湯、さり気ないロビーの囲炉裏など、そこここにリラクゼーションの場が確保されています。また迷路になりそうな本館と新館の築年数差を解消して、全体的に清潔な印象を受けました。
  • きめ細やかなサービスを期待したり、日本情緒豊かな宿を求めるのであれば、この宿は向いていないと思います。
    徹底した食本位に立った宿なので、客室は小さくてもいいから海山の御馳走を沢山食べたいという世代、まさに若年層向けに照準を合わせた宿と言えると思います。勿論食が豊かな50代、60代でも満足出来ると思いますが、そういった方は昼食を我慢して訪ねた方が宜しいでしょう(笑)。



  • 宿泊日 晩秋の足音を間近に感じて
  • 参考価格 26335円    
  • 四季館 彩冬の予約
滋味溢れる素朴な朝食。いろいろな物が丁寧につくられています。
レイアウト、アレンジ、器の向きまで整然としていて、料理が輝いていました。

たわわに実った林檎。青森県では視野一面に林檎畑が飛び込んできて驚きです。

夕食 客室 風呂 サービス 清潔感


7
選べる4品 コンパクト 程よい大きさ 特記事項無し 館内全体
量にこだわる方には最適 お籠もり派に適 数種類の風呂あり 爽快感もあり

 近場のお勧めスポット
  • 安比高原スキー場
    スキー客の減少に伴い、現在はオールシーズンリゾートとして営業しています。

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