湯野上温泉 蕎宿 湯神 岩風呂付き客室

   大川羽鳥県立公園、大川ラインの一番の景勝地「塔のへつり」があります。百万年の歳月をかけて浸食と風化を繰り返し、見事な景観を創りました。白い岩肌の織りなす眺めは一幅の名画となっています。
 その阿賀野川上流の景勝地の大川ラインの中央部に位置し、四季折々の渓谷美を見せる閑静な温泉郷。
 温泉は那須火山帯に源を発するアルカリ性単純泉で、各種疾病に効能があるという噂を呼んで人気を集めています。
大川渓谷沿いの雄大な眺めで知られる湯野上温泉は湯宿の点在する素朴な温泉街で、大きな旅館が立ち並ぶ芦ノ牧温泉とは対照的に民宿が多くあります。何処の宿も露天風呂を抱え、ゆったりひなびた風情を楽しむにはもってこいの温泉です。
 
この宿は10数年前まで何度と足を運んだ宿の一つです。ここの一番の魅力は食事や設備に対してリーズナブルな料金であるということです。
  会津鉄道の踏切を過ぎたところにこぢんまりと宿が佇んでいます。駐車場は無いと言ってよく、宿の入り口付近に駐めます。小さな「湯神」と書かれた玄関をくぐるとすぐに板場があり、木訥な親父さんが夕食の準備をしています。初めて訪れたときは数少ない言葉に戸惑ったときもありましたが、何度と行くにつれそれが普通に感じてきました。ここで高級旅館のようなもてなしを期待するのが野暮なことで、構われない分落ち着けるというものです。 梨や林檎のお土産持参で訪ねたときは、料理と共に会津の地酒を出してくれ、宿主の思いは十分に伝わってきます。

  
宿のタオルには「10人以上では来ないで下さい」と書かれています。ユーモラスながらも本音なのでしょう。殆ど主人一人で宿を切り盛りしており、部屋も4つのみでまさしく民宿といっていい宿です。                                              

  • 僅か数歩の板の間を歩くと3つほどの部屋があり、一番奥まったところに増築した洋室があります。各部屋を入った所に4畳半程の板の間があって囲炉裏が切ってあります。夕食や朝食はここでいただきます。ただこの囲炉裏を使った料理は何度訪ねても登場せず、惜しまれる気がします。炭火を使った鍋料理は冬にはもってこいなのですが…。お願いをすれば炭を入れてもらい、暖をとることは出来ます。
    奥には8畳程の和室があり、既に布団が敷いてあるので、疲れたときはすぐに横になれます。
  • 部屋には2人で十分な岩風呂がついており、ちょろちょろ絶え間なく温泉が流れています。しかし湯温が高いので、いつも調節してからではないとやけどをするので要注意です。露天ではないものの、2カ所の窓を全開すれば半露天に早変わりして、涼やかな風が巡ってきます。窓のすぐ横を会津鉄道が走っており、乗客の顔がはっきりと分かるほど近いので、目が合うと何処か恥ずかしくなります。
    この岩風呂がある代わりに大浴場はありません。また小さな宿なので、所謂パブリックスペースも勿論ありません。この宿に来たら、しんしんと降る雪景色を愛でながら囲炉裏で語らうか、二人で岩露天を愉しむか…。どちらにしても部屋でゆったりすることになります。
  • 料理は会津の山深さを感じる蕎麦を中心とした会席です。刺身3点盛り、蕎麦豆腐、山菜など膳に5品ほどが用意されて宴が始まります。時に刺身の代わりに馬刺しも登場するので、苦手な方はあらかじめ連絡しておいた方がいいでしょう。その後蕎麦がゆ、蕎麦サラダ、岩魚の塩焼きと出てきて、最後は冷水できらきら光った手打ち蕎麦でしめることになります。この美味しい会津の手打ちを食べたくて、何度も足を運ぶことになりました。
    ただ途中でお腹が一杯になりやすいので、地酒の國権はほどほどにしておくことです。

    蕎麦が大好きでフルコースを堪能したいのであれば、一番にお勧めする宿です。


  • 朝食はまさに素朴です。生卵/海苔/納豆/鮭という定番のおかずに山菜や漬け物を加えてなめこの味噌汁。やっぱり日本人はこの組み合わせが一番いいですね。囲炉裏越しに見える山里ののどかな景色は、宿で食べているというより故郷に戻ってきたような錯覚を覚えます。
    宿の周囲にネコが数匹。晴れた日にはのほほんとしています。朝食の残りをがっつくわけでもないので、いつでも誰かしら御飯をあげているようです。
  • 宿を数分下った川沿いに無料の露天風呂があります。コンクリートを打って岩で囲っただけの風呂ですが、朝方は気持ちいいです。3月に訪れたときは前日はしんしんとした雪でしたが、翌日は見事な晴れ。積もった雪もあっという間に消えてしまい、のどかな春を感じる湯浴みとなりました。

  • 会津には多くの醸造元があります。自分にあった酒を探す旅もおつなものです。会津若松市の鶴ヶ城付近にある「宮泉銘醸」は必ず訪ねる酒蔵です。純米大吟醸無濾過生原酒と大吟醸2本が特にお勧めです。ほのかな香りと柔らかさの中にふくらみを感じるお酒です。いつでも蔵の見学が出来るので、旅行のコースに入れておくといいと思います。また少し脚を伸ばして喜多方に行けば、クラシック音楽を流して発酵させた音楽酒もあります。
  • この宿を「上質な宿」というくくりには入れるには難しいところです。しかしこの料金で料理がしっかりしており、岩風呂と囲炉裏がついてプライベートに浸れる宿はそうそう見つけることは出来ません。何処にも民宿は数多くありますが、その枠を越えているのは間違いないことです。


  • 宿泊日 春の到来を待ちわびるとき
  • 参考価格 10000円
                                                  


夕食 客室 風呂 サービス 清潔感
蕎麦懐石はボリューム十分 囲炉裏に安らぎ 清潔/綺麗な岩風呂 必要最低限 こざっぱり
〆の蕎麦は絶品 適度な広さ 山里の眺め 構われずgood

 近場のお勧めスポット
  • 塔のへつり
    一番上の写真参照。大川の渓谷美が見事です。全長200mにわたって、大規模な奇岩が整列しています。
  • 大内宿
    一番下の写真参照。茅葺きの家並みを残し、江戸時代の家並みや郷愁が味わえます。蕎麦屋や土産物屋もあり!

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