あだたら高原岳温泉 お宿 花かんざし 露天風呂付客室 片栗

 真っ青な空、安達太良山麓に広がる爽やかな高原の温泉郷。豊富な源泉から9キロメートルも引き湯した全国でも珍しい酸性泉。それが岳温泉です。
 昭和50年代後半の頃は「にこにこ共和国」として賑わいを見せた岳温泉ですが、現在は落ち着きを取り戻して静けさをみせ、ほっとする温泉になっています。その温泉街の中心地、ヒマラヤ通り沿いにあるのが花かんざしです。
 この花かんざしはその中でも部屋数10程度の小さな宿です。建築してから50年以上経過した木造家屋なので、滞在中は2階の床の軋む音が何度か聞こえてきます。ただ決して不快でなく、逆に何処か昔懐かしい音でもあります。宿の名称の通り、数十年以上前の小物や日用品が土産物売場に混在していたり、畳敷きの奥に婚礼衣装が飾られていたり、「花いかだ」という甘味処にはアンティークなテーブルも配置されるなど、
古の大正ロマンを感じる宿に仕上がっています。
 部屋の中も照明が行燈風(上記写真)になっていたり、広縁との欄間には明かり取りの透かし彫りが入っていたり、部屋には水屋を設けるなど日本情緒豊かな造りになっています。部屋の土壁は少々剥がれているところもあるものの、化粧室やトイレは新しい物に付け替えてあり、清潔さを忘れていません。
 この夏に露天風呂付き客室が完成したと言うことなので、早速訪ねてみました。

花かんざし(再訪)はこちらへどうぞ。     

大正浪漫の風情を感じる宿


  • 大浴場は幾分深めで、昔のままの青の方形タイルが張られてあります。そこから出たところには4、5名入ったらいっぱいになってしまうような露天風呂があります。ここには夕食時まで樽酒が置いてあり、湯船に浸かりながら升酒が愉しめます。旅の疲れをすうっと癒してくれるようなほどよい飲み心地ですが、手酌酒故に注意が必要です。
  • 宿泊した客室は片栗。8畳の和室が2部屋の構成です。もともとは2室だったところを、2007年の8月に改築して庭に露天風呂を配して1つの客室に生まれ変わりました。その部屋が随分変わっていて、当時の建築図面が無かったために部屋の壁をぶち抜くことが出来ず、広縁の僅か1m程度の所からしか隣の部屋に行けません。そのため1部屋は居間兼寝室、もう一部屋は食事処としてしか活用できない造りとなってしまっています。少々勿体ない造りで行き来に面倒な部分はありますが、このコンパクトな部屋が意外に心地よく感じるから面白いものです。
  • この客室の一番の自慢は風呂です。庭に露天風呂が…というより庭全てが岩風呂になっています。大浴場に備え付ける風呂を間違えて部屋に取り付けてしまったのではないかと思われるほど巨大で、10人近くが一緒に入れるほど立派な岩露天です。若女将の話によると「考えていた以上の大きさの風呂になってしまって」。設計段階では予期しなかった番狂わせも、宿泊客には大きな満足感となりました。
    この規模の客室露天を東日本から捜すとなると、同じ福島の「
    静楓亭」ぐらいかも知れませんが、この岩組が素晴らしいです。岩手の「湖山荘」や新潟の「福泉」も大きくて眺めがいいですが、花かんざしはそれとは違う充足感があります。この酸性泉の巨大岩露天に入るためだけにこの客室を予約してもいいと思うほどです。
  • 外の景色はのぞめないものの、その大きな湯船と岩組が充足した開放感をもたらしています。到着後にまず湯浴み。夕食後、就寝前、朝起き、朝食後、おまけにもう一回。出発の準備が万端整っても、名残惜しむように足湯だけでも…。何度極楽気分を味わったことでしょうか。
大きな岩露天

  • 料理は旬を大切にした一品出しの会席料理です。「うた」「かぜ」「まい」の3つの料理コースがあり、今回は一番上の「まい」を選択しました。
  • 突き出しの前菜は山の物/海の物を取り合わせており、寒椿の花はサーモンでイメージしています。花かんざし名物、蛤のオリーブスープは昆布だしとオリーブ油が絶妙のコントラストを描いて体の芯まで温めてくれます。旬の甘鯛があがったというので、別注で甘鯛の骨蒸しとかぶら煮をお願いしましたが、これが絶品!この2品だけでも食べに来た甲斐があったと言えるほどの料理でした。
    その他に色合わせた煮物、刺身、ボリュームたっぷりの会津牛ステーキ、野菜の天ぷらなど、品数も量も味も満足のいく料理内容でした。鮑の踊り焼きも登場しましたが、前日に宿泊した「よもぎ埜」でその酷な料理法を目にしてしまったので、刺身に変更してもらいました。締めでは豆御飯や赤だし味噌汁、お夜食用にはちまっとしたおむすびも出て、料理宿を謳っているだけのことはある十分な内容を感じることが出来ました。
  • 朝食も手作り豆腐を始め、郷土色豊かな食材が登場。布団を敷いていた部屋とは別の方に9時頃に準備してもらいました。ぎりぎりまで布団から離れず、起きてすぐの品数豊富な料理を目にすると、昨晩の宴がまだ続いているようにも思えてきます。
前菜  名物 蛤のオリーブスープ
別注料理(甘鯛の骨蒸し/かぶら蒸し)
煮付け お造り
野菜の天麩羅 福島牛のステーキ
鮑のお造り デザート
  • 湯茶や冷蔵庫など基本備品は揃っていますが、やはりコーヒーは客室内に用意しておいてもらいたいものです。頼んで部屋に持ってきてもらいましたが、飲みたいときにそばにあって欲しい必需品のひとつです。
    水屋が設置してあるので、お茶を本格的に沸かして朝を迎える人には好都合な造りになっています。
  • 対応されたのは全て若い方ですが、客室への出入りは三つ指の形だけの挨拶とは異なって合手礼や双手礼をとっていました。襖を開けるときも必ず両手を添えるなど、非常に丁寧な応対ぶりに感心しました。築年数50年という建物だけの歴史だけではなく、女将からの伝承がしっかりと受け継がれている面を見た気がします。
  • 再訪したい宿がまた一つ増えることになりました。
 

花かんざし(再訪)はこちらへどうぞ。     

夕食 客室 風呂 サービス 清潔感
薄味にまとめた料理 新旧混在の客室 巨大!な岩風呂 丁寧な対応 古くも清潔
品数も豊富 ゆったりな広縁 源泉掛け流し 随所にもてなす心 廊下は畳
 

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